突然ですが皆さん、「信号機」と呼ばれているものをご存知ですか?
あ、そうそう!それです!
道を歩いているとよく見かける。赤と黄色と青のランプがついてるやつです!
他にも、赤と青だけのやつとか、
矢印ランプが付いてるやつもありますね!
……などと言っていると
「いやいや、馬鹿にするな。知っとるわ」
という声が聞こえてきそうですが……。
果たして、そうでしょうか?
例えば…
皆さん、最近信号機の規格が変わったこと、ご存知でしたか?
降雪地域の信号機は縦型…というのは有名な話ですが、実はある地域では雪の重さへの対策でちょっと変わった設置の仕方をしているんです。どんな設置の仕方か、想像つきますか?
そう!
普段何気なく見ている信号機ですが、詳しく見てみるとまだ知らない情報が沢山!
ということで今回は、そんな信号機の深い世界を覗き見るため信号機マニアのぜろえもんさんにお話をお聞きしました!
“どんな”信号が好き?
―――改めまして、本日はよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
―――まず、最初にお聞きしたいんですが。ぜろえもんさんがお好きな信号機や、マニアとして好んでやっていることは何でしょうか?
僕は縦型の信号機が好きで、その写真をよく撮っていますね。
また、信号機は大きくわけて
・メーカー
・年代
・地域差
の3つの違いがあるんですが。それを比べるのが楽しいですね。
この前は長野で撮ってきました。
―――雪国の信号機って縦型なんですよね。長野も雪降りますからね。
その話は有名ですよね。
長野県は北部の方で縦型信号機がよく設置されてるんですが。そこでは、前後に信号機を取り付ける時ちょっと左右にずらしてつけるんです。
―――え、そうなんですか!?それはなんのために?
雪が積もる面積を減らして、重みを分散させるためですね。
北海道も昔はちょくちょくやってたらしいんですが、今は全部やめちゃったらしいです。
福島もたまにやってたって聞いたかな。
―――取り付けた年代で違うんですか?
いや、地域によるらしいですね。長野県が一番積極的だったっていう。最近も導入しているらしいです。
昔、岩見沢の12号線にはあったんですけど、そこもなくなりましたね。
ただもしかしたらまだ……いや、北海道って、広いんですよ。
―――確かに広いですね!笑
だから、地域によってはまだあるかもしれないですが、僕が知る限りではないですね。
最近規格が変わった(!?)信号機!管理は誰がしているの?
―――ではここから信号機に関する話を聞いていきます。まず、最近話題になったことは、何かありますか?
最近の話……。
実は、信号機って最近規格が変わったんですよ。
―――え!?あれって新しく変わったりするんですか!?
筐体の面積が一回りちっちゃくなったんですよね。
灯火の直径が30センチから25センチになりました。
これは数十年ぶりのことなんですが。
―――数十年ぶり……どうして変わったんでしょう?
LEDの導入で小型化が可能になったことと、製造コストを下げたいっていう狙いがあるらしいですね。信号機って、結局色さえ見えればいいので。
―――だから、小さくなっても大丈夫と。
そういうことですね。
ただ、矢印も小さくなったんですが、あれはどうかと個人的には思いますね。
あれは色じゃなくて図形ですから。
―――見づらくなるとちょっと困りますね。その規格は、どこが決めているんですか?
警察庁ですね。公安委員会とか。
そもそも信号機を管理しているのが警察なんです。
―――……知らなかった。
メンテナンスも、警察が施工業者に委託しています。
ふたを開けて中を見て、消耗が激しいようだったら取り換えることもありますね。
―――信号機のメンテナンスって、僕見たことないです。
あれは1年に1回くらいの頻度でやっているので、見られたらラッキーという感じですね。
―――珍しいんだ……。道路工事なんか深夜にやっているイメージがありますが、メンテナンスもそうなんですか?
場所により様々ですね。
大きな通りとかは深夜にやったりするんですが。でも、基本的には昼間ですね。
―――それは、交通量の兼ね合いで?
そうですね。
道に「車両感知器」と呼ばれるものがあって、それで交通量が分かります。
―――自動化されてるんだ……。てっきり人力でカチカチ調べているアレかと……。
アレは別ですね。笑
また「車両感知器」を使って、信号機の秒数を変えたりもします。
「集中制御」って言うんですけれど。
―――普段通っている道に全然知らないものが……。
地域によって変わる信号機事情
信号機の買い方も地域によって違うんですよ。
―――買い方!そうか、よくよく考えたら信号機だって買ってるんですよね。
北海道は施工業者がメーカーから買うんですが、先ほど言った長野県は警察が買うんです。
警察が入札を出して、メーカーが落札するんですね。
ですので、長野県では一度決まるとその1年はそのメーカー一色になります。
―――独占のような形ですね。
そうなりますね。
独占状態と言えば。山形県の信号が、最近フィルムヒーターを導入しまして。
―――フィルムヒーター?
これは赤信号につくもので。ある気温を下回ったら、自動でヒーターが作動する仕組みになっています。赤の灯火を守るために導入されました。
―――赤信号は確かに、一番大事ですね。
他の色にはつけないんですが、電気代との兼ね合いらしいです。全部に付けたらヤバいことになりますからね。他の地域は電気代を懸念して導入していないようです。
山形だけは信号機の雪を払う人件費との兼ね合いで、導入に踏み切ったと。
―――雪国ならではの事情…といった感じですね。ところで、僕の母方の実家が長野県の上田市なんですが、そこは横型でしたね。
上田は横型ですね。
多分、降雪量で決めてるんだと思います。
―――ああ、上田も雪は降りますけど「豪雪地帯」という程ではないですよね。
僕は中野市に行ったんですが。そこは縦と横がごちゃ混ぜに設置されていたんですよ。
理由は知らべなかったんですが、面白いなと思いましたね。
―――そうだったんですか。ちょっと気になりますね。
多分警察に聞けばわかるとは思うんですが。
京都の北部なんかも雪が降るんですが、そこは縦型信号機を導入していないんですよ。
―――雪国にも横型のところがあるんですね。
はい。縦型の信号機は赤を見上げる形になるんですね。それを嫌って導入しなかったそうです。
石川県の平野部も、確か横型でしたね。それも同じ理由だと思われます。
―――地域によって本当に様々ですね…。
他には……ああ、そういえば山形は北海道に気候が似てるっていう話を聞いたことがありまして。
―――そうなんですか?
月山(がっさん)っていう高い山があって。それで地域が二分されているんですね。その標高が北海道と似ているらしくて。
この前知り合いの信号機マニアと山形の話をしていたときに、「じゃあ北海道もこのくらいの気温なのかなぁ」と話題に出ました。
―――信号に詳しくなると、同時に地域の気候など地理に詳しくなりますね。笑
そうですね。道路標識や鉄道なんかと掛け持ちしている人もいますよ。
僕も、道路好きですから。
―――色々と繋がってるんだなぁ……。
信号機界隈で”革命的”だったストリートビューと、それでも”現地に赴く”理由
―――お話を聞いていると、ぜろえもんさんは「現地に行く」ことに重きを置いているような印象を受けますね。
そうですね。
意外と地域によって情報があったりなかったりするんですよ。
ストリートビューってあるじゃないですか。信号機界隈にとっては革命的だったんですが。
―――地元にいながら、別の地域を見られると。
でも、実際に行かなければわからないことって、やっぱあるんですよ。
例えば、信号機って裏に製造年月やメーカー、仕様、形式などが書いてあるんですが。
―――え、あれ裏に書いてあるんだ!?
例えば「形式」に書いてあるVは「縦型」という意味です。これがHだと「横型」になりますね。
とか、製造番号のTは「横浜の工場」で作られたことを示していて。Zだと「大阪」なんですよ。
―――信号機の裏にこんな情報が……。
これは現地に行かないとわからないですよね。
他にも、ストリートビューを見てから実際に行くと「あ、ここ変わってるな」っていう発見もあるんですよね。
―――ああ、確かに「まさに今」の画像っていう訳ではないですからね。
ですね。
あと、見られる角度が自分の撮りたいものと違っていたり。
だから、自分が一番撮りたい写真っていうのは、やっぱり現地に行かないと撮れないですね。
―――なるほど。
長野県で面白いのは先ほど言った左右ずらしですね。
以前おたくま経済新聞に「雪国の信号特集」という形で記事を寄稿したときに、山形のヒーターの話は書けたんですが、長野のずらし設置の話は手持ちの写真がなくて書けなくて…。それが悔しくて撮りに行きました。
もう一回編集し直せるなら入れて欲しいくらいですね。
―――……もはや職人だなぁ。
“信号機の世界”へ……