ザッザッザッ…
サワサワ…サワサワ…
ゴオオォォッ
―気付いていますか
世界は、音で満ちている―
開幕謎のポエムにて失礼します。(まだ帰らないでください)
竹原と申します。
突然ですが皆さま「アンビエント」という音楽のジャンルをご存じでしょうか?
比較的静かな音響の微細な変化を表現の基調とし、ある特定の場所や空間に雰囲気を添えることを指向した音楽。「環境音楽(Environmental music)」とも呼ばれるが、「アンビエント・ミュージック」という場合はB・イーノが1975年頃に提唱した音楽様式に特化されることが多い。イーノはアンビエント・ミュージックを「聴き手に向かってくるのではなく、周囲から人を取り囲み、空間と奥行きで聴き手を包み込む音楽」と定義する。
『Artwords® 「アンビエント・ミュージック」』より(一部省略)
聞き慣れない(失礼)ジャンルですが、空間と奥行きで聴き手を包み込む…何やらよさげな響き。
一体どんな音楽なんだろう…?
さて、実は札幌には、この「アンビエント」というジャンルで創作活動を行っているトラックメーカーがいるんです!
またその方、自身の音楽で、映像や朗読、ライブペイントなど、様々な表現とセッションを行うイベントも手掛けているそうで…!
竹原も演劇人としてアーティストの末席に名を連ねている身、これはお話を聞くっきゃない!
ということで今回は、札幌で活動しているトラックメーカーMUTOさんに、その音楽と活動についてお話を伺いました。
飲み歩いてたらDJに!?
音楽制作のルーツと、「札幌の音」を切り取ったアンビエント音楽
―――よろしくお願いします。まずは、MUTOさんが音楽を始めたきっかけについて教えてください。
よろしくお願いします。MUTOといいます。
まず、音楽をやるきっかけとしては、最初、中高でHi-STANDARDやGOING STEADYなどのメロコアをバンドでやって、大学入ってノイズ、ポストロックを。大学で建築を勉強していたのでアートやインスタレーションに触れて。大学が関東で、札幌帰ってきて、今で5年位になるんですけど。
―――札幌を出て、関東に行って、また札幌に戻ってきたと。どこの大学でしょうか?
東海大だね。東海大四(東海大学付属札幌高等学校)に行ってて、そこからエスカレーター式に。
―――建築学科だったんですね。
匠になりたくて(笑)
―――ビフォーアフター的な(笑)出身は、札幌ですか?
出身は千葉。保育所年長で札幌に来て。父の仕事の関係で転勤族で、3年ごとに札幌に居て。十勝広尾、また2、3年で函館に行って。広尾が…小3から?それで、小5くらいから函館に行って。中学卒業でまた札幌に・・・。
―――転々としてますね。
で、札幌帰ってきて、音楽やりたいなって思って。飲み歩いてたら、たまたまイベントやってて。そこでDJをやらせてもらったり、自分の作った楽曲をかけて貰ったり。そこから始まって、今の活動に。
―――普段、どのように音楽を作っているんでしょうか。
音楽の作り方、今色々チャレンジしているんですけど、一つは「札幌の音」で何か作りたいなと。
そこに根差して活動をしたい。よく言ったら、写真家が風景を切り取るように、札幌の音を切り取って。自分の家から職場までの音を切り取ったり。実験音楽というか、エクスペリメンタルというか。
札幌民になじみ深い地下鉄の音も使われています…!
―――あ、それも聞きたくて!MUTOさんが作っている音楽のジャンルは、一言で表すとどうなるんでしょうか。
今言った自分の家から職場までの・・・っていうのは「アンビエント」っていうジャンルで。この前イベント(5月23(木)に行われた、MUTOさん主催のイベント「OTO NO SUKIMA」)で出したような音は「ノイズ」というか「エクスペリメンタル」というか・・・その辺ジャンル分けというか、凄く微妙で。
―――難しいですよね。
「よくわかんないので、僕はそう呼んでます」みたいな。
―――(笑)
例えば「ハウス」でも色んな「ハウス」があって。宗派みたいな。宗教みたいなもんだよね(笑)
―――先ほど「札幌の音」を切りとるという話がありましたが、札幌で特殊な音というか、他とは違うなと思えるような音はあるんですか?
んー、例えば通勤の過程にあるものって札幌でも東京でも、列車は列車だし、駅は駅だし、街は街だし、そういう意味ではあまり変わらないとは思っているんですけど。
びっくりしたのは、地下鉄を待っているときに・・・「無音」じゃないですか。捉え方としては。でも作品を作っているときに、録音した音にエフェクトを一つかけただけの作品なんだけど「あ、こんなにも音があるんだ」と思って。音が顕在化するというか。「電車を待っている間にこんなに音があるんだ」みたいな。
―――なるほど。
音が視える、じゃないけど。札幌の人が知っている「札幌の音」を強調、肥大させた時に、みんなが認識出来るというか「あ、こういう音あるよね」ってなったのが、面白くて。だから、特徴的な音というよりは、作っている過程が面白かったので。そういう表現になるように作りたいな。
―――本当は「無音」じゃなくて。でも普段いる環境音だからというところもあって、気付かないんですね。
普段意識を向けていない音に意識を向けることが、音だけ聴かせることによって出来ているんじゃないかなって。聴いてみて「あ、地下鉄っぽいよね」みたいな。
―――前にトラックを聴かせて頂いたときに僕も「おおっ!」という気付きがありました(笑)普段聞いてて絶対覚えているはずなんですけど。
そういう作品作りが一本あって、今やっているのは自分で楽器を作ったりとか。フィールドワーク的なのと、実験的なライブパフォーマンスと、でやっていけたらなと思っています。