おととしの冬、僕は短期で派遣の仕事をしていた。気楽でいい仕事場だったが、そこで同じ大学の女性と出会ってラインを交換した。
齢21にして初めてのライン交換。緊張した。さて、その後することといえば「ランチ」であろう。
……どう誘えばいいんだろう?
ーー『〇〇に美味しい**があるので食べにいきませんか?』
超自然でスマート。ただそんな行きつけの店は僕にはない。むしろ僕を連れて行って教えてほしい。これはダメである。
ーー『こんど〇〇食べにいきませんか?』
シンプルに攻めるのはどうだろう。でもこれには大きな弱点がある。「〇〇嫌いなんですよね」と言われてしまえば終わりである。それはまずい。
ーー『ランチ好きですか』
これだ。これである。「ランチ」が嫌いな人間などいない。断りようがないのだ。嫌いじゃないならランチ行きましょう。勢いで押す最強フレーズ。
『ランチ好きですか』
言えぬまま2年が経った。あの子はランチが好きだろうか。